今回は減量時に導入する有酸素運動のタイミングについて山本義徳先生の書籍を参考にEPOCの効果なども踏まえて考えてみたいと思います。
- EPOCとは?
- 筋肥大を目的とした場合に取り入れる有酸素運動のタイミング
有酸素運動は筋トレ前か後か
コンテストに出るようなかたであれば、必ず減量を経験したことがあると思います。
その中で多くのかたが、この疑問を持った経験があるのではないでしょうか?
「有酸素運動はトレーニングの前なのか?後なのか?」
トレーニング後に有酸素運動を行っているかたが多いのではないでしょうか?
- 後のほうが燃焼効果がいいから
- 先にやるとトレーニングの質も落ちるし
僕も以前はしっかりと調べることもなく、世に流れているこういった情報をもとに、トレーニング後に有酸素運動を実施していました。
しかし、これから記述していくことを考慮した結果、「有酸素運動はトレーニング前」という結論に至りました。
では、なぜそのような理由に至ったかを下で述べていきます。
EPOCとは?
EPOC(Excess post-exercise oxygen consmption)とは運動後酸素消費量のことです。
もう少しわかりやすく言うと、筋トレなどの運動をした後に酸素の消費が増えることをさします。
運動強度が高い場合、実は序盤は酸素を使用せず運動しています。
これは呼吸して酸素を取り入れてから運動するのでは遅いからです。
しかし、実際には酸素が必要なので、本来必要な酸素量と、実際に取り込んだ酸素量に差が生まれています。
この差分を「酸素借」と呼び、運動終了後に返済するような形になります。
それが運動後に収まらない呼吸の正体です。
わかりやすい例をあげると、100m走です。
みなさんも、全力で走った後に行った後に「ハァハァ」なりますよね。
まさにこれが、運動後に酸素の消費が増えている状態です。
有酸素運動はトレーニング前のほうが良いと主張する、大きな要因はここにあります。
EPOCとアフターバーン
厳密にはEPOCはアフターバーンの一部でありますが、仕組み的には上で述べたEPOCと同じようなことが、他のアフターバーン効果にも出てきます。
人間の身体は、激しい運動をすることで回復が必要な状態になります。(上で述べた酸素の回復もそのひとつ)
例えば、スクワットで高重量を扱った時を想像してみてください。
かなりの酸欠状態になるかと思います。
すると、この状態から回復させるために身体へ再び酸素を取り戻すよう働きかけます。
酸欠は簡単な例ですが、運動後にはそれ以外にも体内で様々な回復活動が起こっています。
例えば、ATPやグリコーゲンの再合成、疲労物質の除去などによってもエネルギー消費が活発になっています。
こういった、様々な回復の過程からアフターバーンと言われるような効果、つまり「ハードな運動後、消費カロリーが大きくなる」という事象が起きるわけです。
有酸素運動→筋トレの理由
無酸素運動とEPOC
前述のとおりEPOCは、回復させるためにエネルギーを使うことです。
この点を踏まえると、有酸素運動よりも身体に対してダメージがより大きい無酸素運動のほうが、EPOCが高くなることが感覚的にもわかると思います(もちろん理論もそのとおり)。引用
※一応この部分はとても大切なので引用元は明記しておきます
このため、後に有酸素運動を行うことは、せっかく何もせずとも高まっているエネルギー消費のタイミングと、有酸素運動のタイミングが被ってしまい効率を悪くしてしまうのです。
タンパク質合成が低下
さらに決定的な点はトレーニング後の有酸素運動では、mTORの活性とタンパク質合成が低下するという研究があることです。
また、テストステロンのレベルを比較した研究では、
「有酸素→ウェイト」群は57.7%の増加だったのに対し、
「ウェイト→有酸素」群は15.5%の増加に留まりました。
※ウェイト=ウェイトトレーニング=一般的にイメージされる筋トレ
ここまでの研究を鑑みて、「有酸素→筋トレ」の順で行うことが適しているのではということで紹介させていただきました。
「有酸素運動が後」の意見について
成長ホルモン
ここまでの主張に対して、先に筋トレを行うことで成長ホルモンの分泌が増えるという意見があることは重々承知しています。
成長ホルモンの分泌により、脂肪酸が血中に流出し、その後、有酸素運動をすれば効率よく体脂肪を減らせる。
という意見で「有酸素運動が後」派の最重要主張かと思います。
この点については、血中に流出した脂肪酸をエネルギーとできる状態になるまでにも複雑なプロセスを要します。
こちらの不確実な要素よりも、前述のとおりEPOCを最大限活用したカロリー消費を優先すべきと僕は考えています。
また、この問題は「有酸素→筋トレ」において、有酸素運動によって血流が促進され、筋トレでの乳酸素除去能力が促進されていることが要因で、
有酸素を先に行なった場合に成長ホルモンの分泌が抑制されてしまう。という主張からきているものですが、
強度を落とすことなく、しっかりとトレーニングすることで、しっかりと成長ホルモンが分泌されることもわかっているため、さほど気にする必要はないのではないかと考えています。
目的にもよる
また、あなたの目的は何でしょうか?
弊ブログでは、主に筋トレ、栄養学の付属として減量を取り扱っています。
そのため、いかに筋肥大を追求したうえで、減量を進めていくかといった、トレーニー向けの内容であることからも、筋肥大効率を高く保つかも重要な要素としています。
有酸素運動を後にしてしまうと、エネルギーが損失が激しくなり、AMPKなどの酵素が活性化されて、筋タンパクの合成に関与するmTORの活性が抑制されてしまう等の報告があります。
つまり、筋肥大という点においては、後に有酸素運動をもってくるのは好ましくないとも言えるのです。
この点を踏まえると、有酸素運動を後にすることでのデメリットは、筋肥大に対して大きく作用することとなります。
バルクアップ時の有酸素運動は避けたい
ここまでは減量時について書いてきましたが、バルクアップ時の有酸素運動についても軽く触れようと思います。
バルクアップ時でも、有酸素運動が必要というような研究がないわけでもありません。
しかし多くの研究が、有酸素運動はトレーニングの効果を阻害すると報告しています。
このため、バルクアップ時であれば有酸素運動を行うことは極力避けたほうが良さそうです。
減量時であっても、コンテストに出場するなどの明確な目的がある場合で、絞り切る際の最終手段として有酸素運動を取り入れるくらいの気持ちが良いかもしれません。
とはいえ、絞り切るということはコンテストにおいて優秀な成績を残すためには、マスト要素です。
いくらバルクがあるかといっても、絞り切れていないことには話にならないということは既知の事実ではないでしょうか?
そういった意味では、筋肉は二の次で脂肪を落とす場面があるということも認識しておかなければなりませんね。
本日のまとめ
- 有酸素→筋トレの順が良い
- EPOCは無酸素運動のほうが高い
- 有酸素運動はできるだけ避けるべき
有酸素運動で脂肪を落とすと共に、少なからず筋肉も削られていきます。
多少の犠牲は必要なんだと思います。
わかりやすい例だと、
「めっちゃ筋肉つけてデカくなりたい!」というのであれば、マラソンは避けるよね。ということです。
色々と述べてきましたが、結局は、自分がどうなりたいかがとても大切なんだと思います。
必ず相反する作用が存在します。
その中で何を選択するかは僕ら次第です。
あなたにとって最も重視すべきことは何ですか?
僕らは時に、何かを犠牲にしなければいけないこともあるのだと思います。
欲しいもの全てを手に入れられる。
そんな甘い世界ではないことを筋肉自ら語ってくれている感じですね。
今回は有酸素運動のタイミングについて見てきました。
以下の記事では、では有酸素運動を凌ぐ効果をあげるHIITとウェイトを用いたサーキットトレーニングを紹介します。
